名古屋へ逃げた探偵さん
 恋人

カレの気分は、その日によって浮き沈み。
ただ、チラシを配っているときは、疲れていても電話する声に影響はなかったのですが、ときどき、めちゃくちゃ不機嫌に感じることがあったんです。

最初はよくわからず、わたしも動揺気味だったんですが、電話で話したり、会って話しを聞いていると、それがその探偵事務所の代表さんの気分によるものだとわかってきたのです。
ああいう職業の方って、ちょっと個性的な人が多かったりするのかな?

その代表の方。
ちょっと行き詰ったり、たぶん、仕事と関係ないプライベートなことでなにかあったとき、カレだけでなく、事務所で見かける全ての人にイライラをぶつけるみたいなんです。
ひどいときは、ずいぶん前の話しを持ちだして、怒られるという理不尽なこともたびたびあるのだとか。聞いているだけでも、イライラがうつりそうな話題もあったくらいです。

暑い夏も、一生懸命チラシを配るカレ。
調査でも、一番大変と思われる炎天下での張り込みもしているというのに。実のところ、炎天下での張り込みも、ただのお手伝いだったというのですが・・・。
そんなカレの話しを聞いていると、わたしでも支えになれるかな?なんて、ちょっと乙女な気分になってしまったのです。
それに、探偵さんの彼女って、なんかちょっと格好いいような気もして、そういう計算もどこかに入っていたのだと思うのですが。

それから、わたしは、カレがちょっとでも体力がつくように、自分がお休みの日は、お弁当を持って、カレのチラシ配りをしている近辺まで行って、1時間だけ休憩を兼ねて一緒にお弁当を食べたり、カレの帰ってくる時間に、作っておいた料理を届けたりしたのです。
カレの気持ちを自分に向けるために。

それは、思ったより早く、実現したのです。
わたしがカレのために料理をするようになって、2週間。
カレから“いつもこんな料理が食べられたら、毎日元気でいられるのになー”なんて、言われたのです。

ここぞとばかりに、わたしもいつも一緒にいたいなーなんて、かわいいことを言ってみたのです。
カレの驚いた表情のあとの、照れた顔を見て、作戦成功だと確信する。
なんとなくの雰囲気で、そのあとすんなりと付き合うことになったのでした。

それから1年以上、チラシ配りをするカレを献身的に手料理で支え、たまに聞ける調査の話しを楽しみにし、わたしたちは上手くいっていると思っていたのです。

ときどき、あのアイドルグループに気をとられているカレが気になるくらいで。
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